ひとりで子どもを育てると決めたとき、わたしがいちばん不安だったのは「生活が回るのか」でした。収入は減るかもしれない。頼れる相手はいない。それで子どもを食べさせて、学校に行かせられるのか。
20年やってきて言えるのは、回ります、ということです。ただし条件があります。「入ってくるお金」と「固定費」を、最初に整えること。ここさえ押さえれば、あとは細かい節約に神経をすり減らさなくても、家計は回ります。
この記事は、その「フレーム」と「削りどころ」の話です。わが家が20年でどう家計を組み立て直してきたかは、有料note「シングルファザー、はじめの1年 ― 20年やってきて振り返る、手続きとお金でつまずいた話」(¥580)にまとめています。
家計は世帯ごとに事情が違います。この記事は個人の経験にもとづく考え方で、「こうすれば必ず貯まる」という助言ではありません。
収入は、たいてい一度下がる
シングルファザーになると、多くの人は働き方を変えます。残業を減らす、時短にする、子どもの都合で動ける職場に移る。そのぶん、手取りは下がりがちです。
参考までに、国の調査(令和3年度 全国ひとり親世帯等調査)では、父子世帯の父自身の平均年間収入は518万円、うち就労による収入は496万円でした(令和2年の1年間の数字)。ただしこれは平均で、個人差はとても大きいです。働き方を変えれば、ここから手取りは大きく動きます。自分の家計は、この平均ではなく、自分の手取りで考えてください。
一方で、児童扶養手当や児童手当、医療費の助成が入ってきます。だから家計は、「給料」だけでなく「給料+手当」で見るのが正しいです(どんな手当があるかはお金・制度・手当 完全ガイドにまとめています)。
わたしは最初の1年、離婚前の生活水準を基準にしていて、ずっと苦しさを感じていました。基準を「いまの手取り+手当」に置き直したら、家計簿の数字は変わらないのに、気持ちがずいぶん楽になりました。まず、基準を今に合わせることです。
まず、家計のフレームをつくる
細かい家計簿は要りません。最初に作るのは、次のフレームだけです。
月の手取り + 手当(月ならし) を、4つに分ける。
- 固定費(家賃・通信・保険・車・サブスクなど、毎月ほぼ同じ額)
- 食費
- その他の変動費(日用品・被服・交際費・子どもの活動費など)
- 積み立て(予備費・教育費)
ここで大事なのが「月ならし」です。手当は月によって入る額が違います。児童扶養手当は奇数月、児童手当は偶数月に入ります。だから「入った月」を基準にすると家計がぶれます。年間で受け取る手当の合計を12で割って、毎月その額が入る前提で組み立ててください。
わたしがやったのは、エクセル1枚です。固定費を1行ずつ書いた表と、月末の残高を書く行。最初の3年は、この2つだけを追いました。それで十分、傾向はつかめます。
固定費の削りどころ(効果が大きい順)
節約は、固定費から手をつけます。一度見直せば、あとは何もしなくてもずっと効き続けるからです。
① 住まい
家賃は、たいてい最大の固定費です。手取りに対して重すぎないかを、まず確認してください。公営住宅や、ひとり親向けの家賃補助・住宅支援を用意している自治体もあります。窓口で聞いてみる価値があります。
② 通信
スマホのプランを見直すと、月に数千円動くことがあります。子どもの分も含めて、いま本当に必要な容量か、確認してみてください。
③ 保険
入りすぎていないか、を見ます。シングルファザーになったら、保険の役割は「自分に万一のことがあったとき、子どもが困らない」ことに絞られます。医療保険をあれこれ足すより、そこがきちんとしているか。そして、保険の受取人が元配偶者のままになっていないかの確認も忘れずに(→ 最初にやる手続きリスト の⑦)。
④ 車
維持費(任意保険・車検・駐車場・ガソリン・税金)を、年額で一度出してみてください。月で見ると小さく見えても、年で見ると大きい出費です。地域によっては手放せませんが、台数や車のグレードは見直せることがあります。
⑤ サブスク
使っていないもの、惰性で続けているものを、一度棚卸しします。
わが家が何を削り、何を守ったのか。20年のあいだに家計をどう立て直したかは、有料note「シングルファザー、はじめの1年 ― 20年やってきて振り返る、手続きとお金でつまずいた話」(¥580)に書いています。
わたしの場合、いちばん効いたのは通信と保険でした。1回見直しただけで、そのあとずっと効いています。逆に、日々の細かい我慢は、続かないうえに効果が小さいので、あまりおすすめしません。
食費:削りすぎない。回る仕組みにする
食費は、削りすぎないほうがいい費目です。子どもは成長するし、無理に切り詰めると続きません。栄養が足りなくなるのが一番よくない。
削るのではなく、仕組みで回すのがコツでした。
- 買い物は週1〜2回に減らす(行く回数が減ると、余計な物を買わなくなる)
- まとめ買い+作り置き
- 定番の献立を数パターン決めて、回す(毎日メニューを考えない)
外食や惣菜は、「疲れて倒れないための必要経費」と考えて、週に何日かは頼っていい日を決めていました。全部を自炊で完璧に、と思うと、先に親のほうが潰れます。
わたしは途中から、「品数を増やすより、栄養が足りていればいい」と割り切りました。丼もの+汁物+常備菜で、子どもはちゃんと育ちました。
手当を家計にどう組み込むか
児童扶養手当も児童手当も、「臨時収入」ではなく「毎月の収入の一部」です。入った月にまとめて使わず、月ならしで生活費に組み込みます。
奇数月・偶数月で入る額が違うので、入る額が少ない月に備えて、予備費を薄く持っておくと、月末に慌てません。
医療費助成や各種の割引は、「見えにくい節約」です。使い漏れがないか、年に1回、棚卸しをしてください。証書を持って窓口で「使える割引はありますか」と聞くだけでも違います。
わたしは最初のころ、手当が入った月にまとめて買い物をして、翌月に足りなくなる、というのを何度かやりました。手当が入る口座と、生活費の口座を分けたら、それが止まりました。
予備費と教育費:薄くていいから、先に取る
予備費は、子どもの急病、家電の故障、冠婚葬祭など、「いつか必ず来る臨時の出費」に備えるお金です。まずは「生活費の1か月分」を目標に、毎月少額でも先取りしてください。
教育費は、進学のタイミングで急にまとまって必要になります(→就学援助とはや、高校・大学の支援制度)。金額の大小より、毎月同じ額を別にする習慣のほうが大事です。
わたしは月に数千円ずつでしたが、10年でまとまった額になりました。ゼロと少額では、10年後がまったく違います。
やらないほうがいいこと(わたしの考え)
- 見栄の出費。周りに合わせた習い事や持ち物の背伸びは、家計をじわじわ削ります。
- 生活費をリボ払い・カードローンで埋める。金利が重く、抜けにくくなります。まとまったお金が要るなら、先に公的な貸付(→母子父子寡婦福祉資金貸付金)を検討してください。
- 保険で貯めようとする。一般論として、保障と貯蓄は分けて考えたほうがシンプルです。ただし、いまの保険を見直すかどうかは、加入時期や内容で判断が変わります。迷ったら、FPや自治体・社会福祉協議会の家計相談の窓口へ。
- 子どもにお金の話を一切しない。隠すのではなく、年齢に応じて「わが家はこういう状況で、ここにはお金をかける」と共有していい、とわたしは考えています。
まとめ
- 家計が回るかどうかは、「手取り+手当」と「固定費」で8割決まる
- 節約は固定費から。通信・保険・車を年額で見直す
- 食費は削りすぎない。買い物の回数を減らして、仕組みで回す
- 予備費と教育費は、薄くても先取り
20年での家計の立て直し、うまくいったこと・失敗したことは、有料note「シングルファザー、はじめの1年 ― 20年やってきて振り返る、手続きとお金でつまずいた話」(¥580)にまとめています。
- 使える手当の全体像 → お金・制度・手当 完全ガイド/児童扶養手当は父子家庭ももらえる?
- 養育費の取り決め → 養育費の相場と取り決め方
- 教育のお金 → 就学援助とは
参考にした公式情報(一次情報)
※ 内容は2026年8月時点で確認したものです。制度・金額は変わることがあります。