「ひとり親 支援」で調べると、出てくるのは母子家庭向けの情報ばかり。父だと使えないのかと不安になります。
結論から言うと、ほとんどの制度は父子家庭も対象です。児童扶養手当も、遺族基礎年金も、資格取得の給付金も、父が使えます。かつては母子家庭に限られていたものが、順に父子にも広がってきました。
この記事は、その「使えるもの」を一望できる目次です。気になった項目から、それぞれの詳しい記事へ飛べるように作っています。まずは全体像だけつかんでください。金額や所得の上限といった数字は、年度と自治体で変わるので、各制度の個別記事にゆずります。
この記事は、公的機関の情報と自分の経験にもとづく整理です。金額や所得の上限、対象年齢は、年度と自治体で変わります。数字は各制度の個別記事や窓口で確認してください。個別の相談は、役所の窓口や専門家へどうぞ。
はじめての方は、先にシングルファザーになったら最初にやる手続きリストで全体の段取りを見ておくと、この記事がぐっと読みやすくなります。実際にどう申請し、どこでつまずいたかをまとめた有料note「シングルファザー、はじめの1年 ― 20年やってきて振り返る、手続きとお金でつまずいた話」(¥580)も用意しています。
まず全体マップ
使える制度を、目的で9つに分けました。下の表で当たりをつけて、詳しい説明へ進んでください。
| 分類 | 主な制度 | 何のため | 窓口 | 詳しくは |
|---|---|---|---|---|
| ① 毎月・定期のお金 | 児童手当/児童扶養手当/特別児童扶養手当/(死別なら)遺族年金 | 子育ての基礎的な現金給付 | 市区町村・年金事務所 | 児童扶養手当の対象・金額/申請の流れ/児童手当との違い |
| ② 医療のお金 | ひとり親家庭等医療費助成/子ども医療費助成 | 医療費の自己負担を軽く | 市区町村 | ひとり親家庭等医療費助成(マル親) |
| ③ 教育・学校のお金 | 就学援助/高校の就学支援金・奨学給付金/大学等の修学支援新制度(給付型奨学金・授業料減免) | 学費・学用品・進学費用 | 学校・市区町村・国・JASSO | 就学援助とは |
| ④ 税が軽くなる | ひとり親控除/住民税非課税/国民年金の免除 | 手取りを増やす・負担を減らす | 勤め先・税務署・市区町村・年金 | ひとり親の税金がわかる/国民年金の免除・猶予 |
| ⑤ 借りる | 母子父子寡婦福祉資金貸付金 | 進学・就職・生活のまとまった出費 | 市区町村・都道府県 | 母子父子寡婦福祉資金貸付金とは |
| ⑥ 仕事・資格 | 自立支援教育訓練給付金/高等職業訓練促進給付金 | 資格を取って収入を上げる | 市区町村 | ひとり親の資格取得を支える2つの給付金 |
| ⑦ 割引・減免 | JR通勤定期の割引/上下水道・粗大ごみ等/保育料 | 固定費を下げる | 市区町村・鉄道会社 | 最初にやる手続きリスト/保育料はどう決まる? |
| ⑧ 養育費 | 取り決めの費用補助/保証料補助 | 養育費を確実に受け取る | 市区町村 | 養育費の相場と取り決め方 |
| ⑨ 相談先 | ひとり親相談窓口/自立支援センター/法テラス | 何が使えるかの棚卸し | 各機関 | この記事の⑨ |
① 毎月・定期のお金
子育ての土台になる現金給付です。
- 児童手当:中学生まで、ではなくなりました。2024年10月から所得制限がなくなり、高校生年代まで、偶数月の年6回で支給されます。離婚などで受給者が元配偶者だった場合は、自分に変更する手続きが要ります。これを忘れると、児童手当が相手の口座に入り続けます(→ 児童手当と児童扶養手当の違い)。
- 児童扶養手当:ひとり親向けの中心的な手当です。父子家庭も2010年から対象です。所得制限があり、奇数月の年6回。申請した月の翌月分からなので、申請が1か月遅れると、その月分はもう受け取れません。さらに、毎年8月に「現況届」を出さないと支給が止まり、受給5年(または要件該当7年)の前後で手当が半分になる仕組みもあります(届出で回避できます)。→ 対象と金額は児童扶養手当は父子家庭ももらえる?、申請の流れ・現況届・5年半額の回避はひとり親の手当を申請する編へ。
- 特別児童扶養手当:障害のある20歳未満の子を育てているときの手当です。障害の程度と所得で判断されます。
- 遺族年金(配偶者を亡くした場合):遺族基礎年金は2014年から「子のいる父」も対象です。厚生年金に入っていた配偶者なら遺族厚生年金もあります。→ 最初にやる手続きリスト/保険・年金の手続き編 に詳しい段取りを記載。
- 障害年金(子ではなく、あなた自身に障害があるとき):働くのが難しいときの支えになります。年金事務所へ相談を。
わたしの場合、最初にやったのは児童扶養手当の申請でした。ここで受け取る「証書」が、このあと医療費助成や割引の申請で何度も入口になります。迷ったら、まずこれです。
各制度を実際にどう申請し、どこでつまずいたかは、有料note「シングルファザー、はじめの1年 ― 20年やってきて振り返る、手続きとお金でつまずいた話」(¥580)にまとめています。
② 医療のお金
- ひとり親家庭等医療費助成:ひとり親世帯の医療費の自己負担を軽くする制度です。自治体ごとの制度なので、名前も、対象年齢も、所得の上限も、支払い方も、地域でかなり違います。所得制限を児童扶養手当と同じ基準にしている自治体が多く、児童扶養手当が全部支給停止になると医療費助成も外れることがあります。
- 子ども医療費助成:こちらはひとり親でなくても対象です。子どもの年齢や自己負担の有無は、やはり自治体で違います。
受け取り方には「現物給付(窓口でその場で無料〜少額)」と「償還払い(いったん払って、あとで申請して戻る)」の2パターンがあり、これも自治体で分かれます。県外の医療機関にかかると償還払いになることが多いので、旅行先や里帰り先の領収書は必ず取っておいてください。また、高額療養費で戻る分とは二重にはなりません。毎年(多くは8月)更新があり、引っ越したら転入先で申請し直しです。→ 詳しくはひとり親家庭等医療費助成(マル親)とは。
③ 教育・学校のお金
学齢によって、使える制度が変わります。
- 就学援助(小・中):学用品費や給食費、修学旅行費などの補助です。認定は前年の所得で見るので、ひとり親になったばかりの年は、前年が「夫婦の所得」で計算されて通らないことがあります。そのときは「家計が急変した」という理由で、年度の途中でも申請できます。また、入学準備金(新入学の学用品費)は、入学前に前倒しで支給する自治体が多く、案内は秋から冬に来ます。→ 就学援助とは
- 高校生等就学支援金(授業料)と高校生等奨学給付金(授業料以外=教科書・通学費など):どちらも所得の要件があります。家計が急に変わったときの相談窓口もあります。
- 大学・専門学校の「高等教育の修学支援新制度」:返さなくてよい給付型奨学金(日本学生支援機構=JASSO)と、授業料・入学金の減免をセットで行う制度です。所得と資産の要件があります。令和7年度からは、多子世帯について所得制限なしで授業料等の減免が広がりました。JASSO には、この新制度とは別の給付奨学金・貸与奨学金もあります。
わたしの実感として、教育のお金は「進学の直前に、急にまとまって必要になる」ものです。子どもが小さいうちは使う機会がなくても、存在だけは知っておくと、いざというときに慌てません。
④ 税が軽くなる
支給されるお金ではありませんが、手取りに直結します。
- ひとり親控除:その年の12月31日時点で、婚姻していない・生計を一にする子がいる・所得が一定額以下、の3つを満たすと受けられます。所得税と住民税の両方で控除されます。勤め先に出す「扶養控除等申告書」の『ひとり親』欄にチェックを入れないと反映されません。もれても、翌年からさかのぼって確定申告(還付申告)で取り戻せます。なお、これは児童扶養手当の所得判定とは別の計算なので、混同しないでください。→ ひとり親の税金がわかる
- 住民税が非課税になるかどうか:非課税だと、医療費助成・保育料・各種給付金・国民健康保険料・国民年金保険料の判定でも有利に働きます。1つの数字(課税か非課税か)が、複数のところに効いてきます。
- 国民年金の免除・納付猶予:自営などで自分で納めている場合、ひとり親には基準をゆるめる特例があります。払えないときほど、未納にせず窓口で相談を。未納の期間は将来の年金にも、障害年金・遺族年金の要件にも響きます。全額免除でも、将来の年金の半分は残ります。→ 国民年金の免除・猶予/保険・年金の手続き編
わたしは1年目、勤め先に出す「扶養控除等申告書」の書き直しを忘れて、ひとり親控除がもれました。翌年に確定申告で取り戻しましたが、控除は申告しないと反映されません。ここがスタートです。
⑤ 借りる(貸付)
- 母子父子寡婦福祉資金貸付金:進学、就職の準備、技能習得、生活の立て直しなど、用途別に借りられる公的な貸付です。父子家庭の父も対象(2014年〜)で、窓口は都道府県・指定都市・中核市。民間の金融機関ではありません。修学・修業・就職支度・技能習得などの資金は無利子、それ以外も連帯保証人を立てれば無利子・立てなくても低い利率で、保証人がいなくても借りられます。→ 母子父子寡婦福祉資金貸付金とは
わたしが窓口で言われたのは、「借りる前に、返さなくていいお金(給付)を使い切りましたか」でした。順番としては、給付を先に当たって、それでも足りない分を貸付で、が基本です。借りたら返す制度なので、借りる前に返済の見通しを窓口の人と一緒に立ててください。
⑥ 仕事・資格を取る
収入そのものを上げるための支援です。父子家庭の父も対象なのに、あまり知られていません。
- 自立支援教育訓練給付金:指定された講座を受けて修了すると、受講費の一部が戻ります。受講料はいったん自分で払い、修了後に申請して戻るので、手元の資金は別に必要です。
- 高等職業訓練促進給付金:看護師や保育士など、資格の養成機関で学ぶ期間の生活費を、毎月支える給付です(修了時に一時金も)。市町村民税が課税か非課税かで額が変わります。
どちらも、受講や入学を決める前に、窓口で事前相談をしておくことが条件になっていることが多いです。「これから学校に通おうと思う」の段階で、一度相談してください。あとから「対象外でした」となると取り返せません。→ ひとり親の資格取得を支える2つの給付金
⑦ 割引・減免(自治体差が大きい)
固定費を下げる方向の支援です。地域でばらつきが大きいので、証書を持って窓口で確認するのが早いです。
- JR通勤定期の割引:児童扶養手当を受けている世帯は、通勤定期を3割引で買えます。ただし児童扶養手当が全部支給停止の間は、この割引も止まります(→ 最初にやる手続きリスト の④)。
- 上下水道・粗大ごみ・公共施設の利用料などの減免:やっている自治体とやっていない自治体があります。
- 保育料の軽減・利用調整:3歳以上の保育料は無償、0〜2歳は前年の所得(住民税)で決まります。ひとり親世帯には第1子の軽減・第2子以降無償・副食費免除などがあり、入園選考でも加点されます。ただし軽減は申請・証明が要ることがあるので、通知が来たらそのまま払う前に窓口へ。→ 父子家庭の保育料はどう決まる?
わたしは、児童扶養手当の証書を持って市の窓口に行き、「この証書で使える割引はありますか」とまとめて聞きました。担当の方が一覧で教えてくれて、水道料金の減免をその場で申請できました。
⑧ 養育費
まず、取り決めを形に残すことが出発点です。口約束だけだと、あとで動けません。形には段階があります。
- 公正証書(強制執行認諾文言つき):不払いのときに、裁判をしなくても差し押さえに進めます
- 家庭裁判所の調停調書・審判書:話し合いがまとまらないときは、調停で取り決めます
この3つをまとめて「債務名義」と呼び、これがあって初めて、相手の給料や預金を差し押さえられます。2026年4月からは、取り決めがなくても一定額を請求できる「法定養育費」や、養育費が他の借金より優先して回収できる「先取特権」も始まりました。
そのうえで、自治体の支援が使えることがあります。
- 公正証書の作成にかかる費用(公証人手数料・戸籍の取得費など)の補助
- 保証会社と養育費保証契約を結ぶときの保証料の補助(不払い時に保証会社が立て替え、あとで相手に請求してくれるしくみ)
いずれも、やっている自治体とやっていない自治体があります。なお、受け取った養育費は、児童扶養手当の所得判定では8割が所得に加算されます。「養育費が入るようになったから安心」ではなく、手当と合わせて家計を見てください。→ 詳しくは養育費の相場と取り決め方。
⑨ どこに相談すればいいか
制度は数が多く、全部を自分で把握するのは大変です。
- 市区町村のひとり親相談窓口/母子・父子自立支援員
- 母子家庭等就業・自立支援センター
- 法テラス(養育費・親権など法律のこと)
わたしがいちばん助かったのは、自立支援員の方に「うちの場合、何が使えますか」と棚卸ししてもらったことでした。自分で一つずつ調べるより、ずっと速い。父親が行ってもいいのか、と身構えていましたが、まったく問題ありませんでした。
まとめ:使う順番
迷ったら、この順で当たっていくと整理しやすいです。
- 児童扶養手当を申請する(証書がこのあとの入口になる)→ 申請の流れ
- その証書で、医療費助成と割引・減免を申請する → 医療費助成
- 税の控除を申告する(勤め先の扶養控除等申告書から)→ ひとり親の税金
- 教育・資格・貸付のお金は、必要になったタイミングで → 就学援助/資格の給付金/福祉資金貸付
- 全体の段取り・手続き → 最初にやる手続きリスト/役所でやる手続き編/ひとり親の手当を申請する編/保険・年金の手続き編/税金の手続き編
- 仕事との両立 → 子どもが急に熱を出したとき/学童保育
- 教育・進路 → 就学援助/高校の学費はどこまで支援される?/学校とのやり取り編
- 家計の組み立て方 → 父子家庭のリアルな家計
- 実際にどう申請し、どこでつまずいたか → 有料note「シングルファザー、はじめの1年 ― 20年やってきて振り返る、手続きとお金でつまずいた話」(¥580)
参考にした公式情報(一次情報)
- こども家庭庁「児童扶養手当について」
- こども家庭庁「児童手当制度のご案内」
- 政府広報オンライン「児童手当」
- 国税庁 タックスアンサー No.1171「ひとり親控除」
- 文部科学省「就学援助制度について」
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
- こども家庭庁「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業」
- こども家庭庁「高等職業訓練促進給付金」
- 日本年金機構「遺族基礎年金」
※ 内容は2026年8月時点で確認したものです。制度・金額は変わることがあります。