手続き・お金

養育費の相場と取り決め方|受け取れないときにできること(ひとり親)

「養育費 相場」で調べてこのページにたどり着いた方へ。先に、この記事で伝えたいことを3つに絞ります。

  1. 相場は、家庭裁判所が公開している養育費算定表で見当がつきます。
  2. でも、本当に大事なのは金額よりも、書面で(できれば公正証書で)形にしておくことです。
  3. そして、受け取れなくなったときに何ができるかを、先に知っておくことです。

なお、この記事は、離婚または未婚でひとり親になり、相手方に養育費を求める立場の方に向けたものです。死別でひとり親になった場合、養育費は生じません(遺族年金などは別の記事にまとめています → 最初にやる手続きリスト)。

この記事は、裁判所・法務省・こども家庭庁などの公開情報にもとづく整理です。制度や金額は年度や個別の事情で変わります。実際の取り決めや手続きは、弁護士・法テラス・お住まいの自治体の窓口で確認してください。この記事は法律の助言ではありません。


相場は「養育費算定表」で見当をつける

養育費の金額に、決まった正解はありません。ただ、話し合いや調停で目安として使われている表があります。「養育費・婚姻費用算定表」です。家庭裁判所が公開しています。

見方はシンプルです。

  • 払う側ともらう側、それぞれの年収
  • 子どもの人数(1人・2人・3人)
  • 子どもの年齢(0〜14歳か、15歳以上か。15歳以上のほうが高めに出ます)

この3つを表に当てはめると、月額の目安が読み取れます。いまの表は、令和元年(2019年)12月に改定された版です。

この記事では、具体的な金額の表は載せません。理由は2つあります。ひとつは、表は将来また見直される可能性があること。もうひとつは、表の数字はあくまで出発点で、進学費用や病気など個別の事情、双方の合意によって上下するからです。金額を確認したいときは、「養育費算定表」で検索して、裁判所のサイトの表を直接見てください。

わたしは当事者になったばかりの頃、相場という感覚がまったくないまま、金額の話をしていました。高いのか安いのか、判断する物差しがなかった。算定表の存在を知って、はじめて「この年収同士なら、だいたいこのあたり」という基準ができました。まず物差しを持つ。そこからです。


口約束にしない ― 取り決めは「書面」、できれば「公正証書」

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

養育費の取り決めには、大きく3つの形があります。そして、それぞれ後に残る書面が違います。

  1. 話し合いで決める(協議) → 合意した内容を公正証書にする。とくに「約束どおり払わなければ強制執行を受けても異議はない」という一文(強制執行認諾文言)を入れた公正証書にします。公証役場で作ります。
  2. 話し合いがまとまらない → 家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てる → まとまれば調停調書が作られます。
  3. 調停でもまとまらない → 自動的に審判に移り、裁判官が金額を決めます → 審判書が作られます。

この「公正証書・調停調書・審判書」の3つを、まとめて債務名義(さいむめいぎ)と呼びます。債務名義があると、相手が払わなくなったときに、あらためて裁判を起こさなくても、給料や預金を差し押さえられます。

逆に言うと、口約束や、ただのメモ書き、LINEのやり取りだけでは、この力がありません。「払う」と言っていた記録にはなっても、それだけでは差し押さえに進めない。いざというときに、もう一度ゼロから手続きをすることになります。

わたしは、はじめのうち、口約束で済ませていました。当時は目の前の手続きで手一杯で、「揉めていないのだから、わざわざ書面にしなくても」と思っていた。あとから公正証書にし直そうとしたら、相手ともう一度話し合うところからで、想像していたより時間がかかりました。揉めていないうちに、書面にしておく。これが結局いちばん楽です。


金額以外に決めておくこと

養育費というと金額の話になりがちですが、金額だけ決めて曖昧なままにすると、あとで認識がずれます。あわせて決めておきたいことを挙げます。

  • 支払う日と方法:毎月何日に、どの口座へ振り込むか。振込にして記録を残します。
  • いつまで払うか(終期):ここは表現で差が出ます。「20歳まで」「22歳に達した後の最初の3月まで」「大学を卒業する月まで」では、期間がかなり変わります。進学を想定するなら、そのつもりで書いておきます。
  • 特別費用の分担:入学金、私立の学費、大きな医療費など、月々の養育費とは別に必要になるお金を、どう分けるか。
  • 事情が変わったときの扱い:どちらかの収入が大きく変わったとき、再協議する、という一文を入れておきます。

わたしは「いつまで払うか」を、はっきり決めていませんでした。子が高校を出るあたりで、相手と認識がずれて、また話し合いになりました。先に一文入れておけば、と思ったところです。


受け取れないとき①:家庭裁判所の手続き

取り決めたのに払われなくなった。ひとり親にとって、いちばん困る場面です。順に見ます。

履行勧告・履行命令

調停や審判で決めた場合、家庭裁判所に申し出ると、裁判所から相手に「約束どおり払ってください」と督促してもらえます。これが履行勧告です。申し立ての費用はかからないか、ごくわずかです。

強制力は強くありませんが、裁判所から連絡が行くこと自体が効くこともあります。まず使える一手です。

強制執行(差し押さえ)

債務名義(公正証書・調停調書・審判書)がある場合、相手の給料や預金を差し押さえられます。ここで養育費には、有利な特例があります。

  • ふつうの借金の取り立てでは、給料は原則4分の1までしか差し押さえられません。
  • でも養育費など「扶養義務にもとづくお金」は、給料の2分の1まで差し押さえられます。
  • さらに、まだ支払期限が来ていない将来の分も、一度の手続きでまとめて差し押さえの対象にできます。毎月申し立て直す必要はありません。

相手の勤務先や口座が分からないとき

差し押さえには、相手の勤務先や口座の情報が必要です。分からないときのために、財産開示手続と、第三者からの情報取得手続があります。2020年4月から使いやすくなった仕組みで、裁判所を通して、市区町村や年金機構から勤務先の情報を、金融機関から口座の情報を取れる場合があります。

わが家がどういう形で取り決めをして、どこでつまずいたか。取り決めのやり直しにかかった手間も含めて、有料note「シングルファザー、はじめの1年 ― 20年やってきて振り返る、手続きとお金でつまずいた話」(¥580)にまとめます。

わたしは「差し押さえ」という言葉は知っていました。でも、債務名義がないと動けないということは、あとから知りました。だからこそ、前の項の「書面にしておく」が効いてきます。


受け取れないとき②:民法改正で変わった点(2026年4月〜)

養育費をめぐるルールは、2026年(令和8年)4月1日から大きく変わりました。ひとり親にとって、知っておく価値のある2点です。

法定養育費

離婚のときに養育費の取り決めをしていなくても、法律で定められた一定額を相手に請求できる制度です。取り決めがないまま別れてしまったケースの受け皿になります。金額は法務省令で定められ、子ども1人あたり月2万円程度とされていますが、正確な額と要件は一次情報で確認してください。対象は、2026年4月1日以降に離婚した場合です。

先取特権(さきどりとっけん)

養育費の債権が、ほかの借金より優先して回収できる位置づけになりました。これにもとづいて、債務名義がなくても差し押さえができる場合が新しく設けられています。

どちらも、始まったばかりの新しい運用です。実際に使うときは、弁護士・法テラス・自治体の窓口で、最新の取り扱いを確認してください。

わたしが当事者だった頃は、「取り決めをしていなければ、そこで詰み」に近い感覚がありました。制度は動いています。あきらめる前に、いまのルールを調べてみてください。


受け取れないとき③:自治体のサポート

養育費の確保について、独自の支援をしている自治体があります。代表的なものを挙げます。

  • 公正証書などの作成費用の補助:公証人の手数料、調停を申し立てるときの収入印紙代、戸籍などの取得費、郵便切手代を補助する制度です。
  • 養育費保証契約の保証料の補助:保証会社と契約しておくと、相手が払わなかったときに、保証会社が立て替えて相手に督促してくれます。その保証料の一部を自治体が補助する制度です。
  • 弁護士による養育費相談・専門の相談員:養育費に特化した相談窓口を置いている自治体もあります。

これらは実施している自治体と、していない自治体があります。内容や上限額もさまざまです。お住まいの自治体の、こども関連の相談窓口で「養育費の公正証書を作る費用の補助や、保証料の補助はありますか」と聞いてみてください。

あわせて、法テラスも使えます。収入などが基準以下であれば、無料の法律相談や、弁護士費用の立て替え(あとから分割で返す)を利用できます。

わたしは、こうした相談先(自治体の窓口や法テラス)があると知ったのが、だいぶ後でした。ひとりで抱え込む前に、まず窓口に電話する。それだけで進むことがあります。


覚えておきたい2つの注意

養育費と面会交流は、別の問題

養育費が払われないからといって、面会交流を止める。逆に、面会させてもらえないから養育費を払わない。どちらも、原則として認められていません。この2つは切り離して考える、というのがルールの建て付けです。感情としては割り切れない部分ですが、手続きの上では別々に扱われます。

児童扶養手当への影響

受け取った養育費は、原則として税金はかかりません(所得税も贈与税も、通常必要な範囲なら対象外です)。

ただし、児童扶養手当の金額を判定するときには、受け取った養育費の8割が所得に足し込まれます。現金だけでなく、家賃や学費の肩代わりといった金銭的な援助も含みます。そのため、養育費を受け取り始めると、児童扶養手当が減ったり、止まったりすることがあります。

「養育費が入るようになったから安心」ではなく、養育費と手当を合わせて、家計がどう動くかで見てください。詳しくは児童扶養手当の記事にまとめています。


まとめ

  • 相場は養育費算定表(令和元年改定版)で見当をつける。ただし目安で、事情と合意で動く
  • 口約束にしない。公正証書・調停調書・審判書(=債務名義)にして、はじめて差し押さえができる
  • 金額のほか、支払日・終期(いつまで)・特別費用・事情変更時の扱いを決めておく
  • 払われないとき:家裁の履行勧告・強制執行(給料の2分の1まで・将来分も)/2026年4月の法定養育費・先取特権/自治体の作成費補助・保証料補助/法テラス
  • 養育費と面会交流は別問題。児童扶養手当は受取額の8割が所得算入される

参考にした公式情報(一次情報)

※ 内容は2026年8月時点で確認したものです。制度・金額は変わることがあります。

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