税金の手続きは、ひとり親にとって「知っていれば下がるのに、書かないと下がらない」ものの代表です。ひとり親控除は、自分で申告して初めて反映されます。放っておいても税務署が付けてくれるわけではありません。
しかも影響は所得税・住民税だけにとどまりません。住民税の額で決まるもの(翌年の保育料など)にも、じわじわ効いてきます。
この記事は、年末調整と確定申告の紙に具体的に何を書くか、去年うっかり書き忘れた分をどう取り戻すかを、手続きの順番で整理したものです。控除の金額や要件のくわしい説明はひとり親の税金がわかるにあります。ここは「窓口と紙でやること」に絞ります。
この記事は、公的機関の情報と自分の経験にもとづく「進め方の整理」です。税額や要件、必要書類は、年度・勤務先・お住まいの自治体で違います。最終的な内容は、必ず税務署・勤務先・自治体の窓口や国税庁の公式サイトで確認してください。個別の相談は、税務署や税理士へどうぞ。
税金の手続きは年1回
ひとり親の税金の手続きは、基本的に年に1回です。
- 会社員・公務員:年末調整(11〜12月ごろ、勤務先に紙を出す)で完了する
- 自営業・フリーランス、年末調整で対象外だった人、書き忘れた人:確定申告(原則2〜3月)または還付申告で反映する
まず自分がどちらかを確認してください。会社員でも、副業がある・医療費控除を使う・年の途中で転職した、などの場合は確定申告が必要になることがあります。
① 会社員:年末調整でやること
「扶養控除等(異動)申告書」のひとり親の欄にチェックする
年末調整でひとり親控除を受けるカギは、勤務先から配られる「扶養控除等(異動)申告書」という紙です。この中に、本人が「ひとり親」に当たるかをチェックする欄があります。ここにチェックを入れないと、ひとり親控除は付きません。
判定の基準日は、その年の12月31日時点です。年の途中でひとり親になった年も、年末時点で要件を満たしていれば、その年の年末調整で反映できます。離婚・死別が10月でも11月でも、その年の分から対象になる、ということです。逆に、年末調整の紙を出したあとに年内でひとり親になった場合は、勤務先に「訂正したい」と伝えれば、年末調整のやり直し(または翌年1月末ごろまでの再調整)に間に合うことがあります。間に合わなければ、次の「還付申告」で取り戻せます。
要件そのもの(婚姻していない・生計を一にする子がいる・本人の所得が一定以下)と控除額(所得税・住民税でそれぞれ決まった額。令和2年分の所得税から適用)は、ひとり親の税金がわかるにまとめています。ここでは「紙のどこを書くか」だけ押さえます。
子を扶養親族として書く
同じ紙に、扶養している子の氏名・マイナンバー・続柄・生年月日などを書く欄があります。子の所得が一定額以下(給与だけならごく少額)であれば、扶養親族として記入します。ひとり親控除とは別に、16歳以上の子は扶養控除の対象にもなります。
出すタイミング
「扶養控除等申告書」は、その年について毎年出す紙です。前年に出したから今年は不要、ということはありません。多くの勤務先で11月ごろに配られ、12月上旬に回収されます。配られたらすぐ、ひとり親の欄と子の欄を埋めて返すのが確実です。
書き終える前に一度、去年の源泉徴収票を見て「ひとり親控除(または旧・寡婦/寡夫控除)が入っていたか」を確認しておくと、抜けに気づけます。
② 書き忘れた・対象外だったとき:還付申告
年末調整でひとり親の欄にチェックし忘れた——このときは、あとから還付申告で取り戻せます。
還付申告は、確定申告の期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。つまり、数年前にさかのぼって申告し、払いすぎた所得税の還付を受けられる可能性があります(実際に還付されるかは他の条件にもよります)。
- 用意するもの:その年の源泉徴収票、本人と子のマイナンバーが分かるもの、還付金の振込口座、印鑑
- 出し方:税務署の窓口、郵送、またはe-Tax(マイナンバーカードがあるとオンラインで完結しやすい)
- 住民税は、税務署に所得税の申告をすれば自治体へ自動で連携されるのが一般的です(別途の手続きが要るかは自治体で確認)
やり方は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で年ごとに1件ずつ作るのが分かりやすいです。源泉徴収票の数字を入力し、ひとり親控除にチェックを入れて、扶養する子を登録すれば、還付される見込み額が画面に出ます。複数年ぶんある場合は、年をまたいで合算せず、その年ごとに1枚ずつ作成します。提出後、還付金が振り込まれるまでは、e-Tax で1か月前後、書面で1か月半前後が目安とされています。
なお、父の場合は「寡婦控除」ではなく「ひとり親控除」が対象です(寡婦控除は女性向けの制度)。名前が似ていて取り違えやすいので、ひとり親の税金がわかるで違いを確認してから書いてください。
③ 死別のとき:準確定申告
配偶者を亡くした場合、亡くなった方の分の確定申告を、遺族(相続人)が代わりに行うことがあります。これを準確定申告といいます。
- 期限:相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内
- 対象:亡くなった方の、その年の1月1日から死亡日までの所得
- 提出先:亡くなった方の住所地を管轄する税務署。相続人全員の氏名などを記した付表を添えます
- 例外:亡くなった方が給与のみで、勤務先の年末調整で完結していた場合などは、原則として不要です(医療費控除の還付を受けたいときなどは、してもよい)
これはあなた自身の確定申告とは別の手続きです。時期が葬儀や役所のおくやみ手続きと重なって余裕がないと思うので、税務署に「準確定申告が必要か」を電話で相談し、必要なら早めに動くだけでも違います。保険・年金の手続きは保険・年金の手続き編にまとめています。
④ 税金が下がると、連動して軽くなるもの
所得税・住民税が下がると、それを基準に決まっている他の負担も軽くなることがあります。代表的なものは次のとおりです。
- 保育料(0〜2歳児):前年の住民税(所得割)で決まる(→保育料はどう決まる?)
- 就学援助:自治体の基準(住民税非課税や所得の目安)で判定
- 国民健康保険料・国民年金保険料の軽減・免除:所得や非課税かどうかで区分が変わる
- 高額療養費の自己負担限度額の区分:所得区分で変わる
これらは「税額が確定してから」動きます。会社員の場合、住民税の額が確定するのは例年6月ごろです。ひとり親控除を年末調整で入れておくと、その分が翌年度の住民税に反映され、上のような負担にも波及します。逆にいうと、控除を書き忘れると、翌年の保育料などが本来より高くなることがあります。
つまずきやすい所(先輩の手帖)
- 「扶養控除等申告書」は毎年出す。 一度出したら終わり、ではない。配られたその場でひとり親の欄を埋める
- 「児童扶養手当」と「ひとり親控除」は別物。 手当をもらっていても、税の控除は自分で申告しないと付かない
- 書き忘れても、あきらめない。 翌年1月1日から5年はさかのぼって還付申告できる
- 自治体の手続き(保育料の再判定など)は、税額が確定する初夏まで反映されない。 すぐ変わらなくても、手続き自体は進んでいる
チェックリスト
年度・勤務先・自治体で扱いが変わります。最後は税務署・勤務先・自治体で確認してください。
会社員・公務員の人(年末調整)
- ☐ 勤務先から配られた「扶養控除等(異動)申告書」のひとり親の欄にチェックした
- ☐ 同じ紙に、扶養している子の氏名・マイナンバー・続柄・生年月日を書いた
- ☐ 12月31日時点で要件を満たすか確認した(年の途中でひとり親になった年も対象)
- ☐ 去年の源泉徴収票で、控除が入っていたかを念のため確認した
確定申告・還付申告をする人
- ☐ その年の源泉徴収票、本人と子のマイナンバー、還付金の振込口座を用意した
- ☐ 父は「寡婦控除」ではなく「ひとり親控除」だと確認した(→ひとり親の税金がわかる)
- ☐ 書き忘れた年の分は、翌年1月1日から5年以内なら還付申告できると理解した
- ☐ e-Tax か税務署(窓口・郵送)で提出した
配偶者を亡くした人(上に加えて)
- ☐ 税務署に「準確定申告が必要か」を相談した
- ☐ 必要な場合、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に提出すると理解した
- ☐ 準確定申告は自分自身の確定申告とは別、と理解した
制度の説明は以上です。わたし自身が、控除の申告をどの年から始めたか、書き忘れに気づいてどう動いたか——その実際の流れは、有料note「シングルファザー、はじめの1年 ― 20年やってきて振り返る、手続きとお金でつまずいた話」(¥580)に書いています。
まとめ
- ひとり親の税金は年1回。会社員は年末調整、もれ・対象外は確定申告/還付申告
- 年末調整のカギは「扶養控除等申告書」のひとり親の欄にチェックすること
- 書き忘れても、翌年1月1日から5年はさかのぼって還付申告できる
- 死別のときは、あなた自身の申告とは別に準確定申告(4か月以内)が要ることがある
- 税額が下がると、保育料など住民税で決まるものにも連動する
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